非定型帳票AI-OCRとは?メリット・デメリット・成功事例を紹介
公開日:2024.10.25
この記事では、非定型帳票AI-OCRに焦点を当て、そのメリットとデメリット、さらに実際に業務効率化を達成した成功事例を紹介します。
目次
非定型帳票AI-OCRとは?
非定型帳票AI-OCRは、人工知能を活用した最新の文字認識技術です。従来のOCRと異なり、さまざまな形式の帳票や手書き文字を高精度で読み取ります。
たとえば、レイアウトの異なる請求書や申込書などを効率的にデジタル化できます。
AI技術により、文字の傾きや汚れにも強く、認識精度が大幅に向上しています。また、学習機能を備えているため、使用するほど精度が高まり、企業の事務作業の効率化やペーパーレス化を促進します。
非定型帳票と定型帳票の違い
非定型帳票とは、レイアウトや記入項目が統一されていない書類を指します。たとえば、取引先ごとに異なる形式の請求書などが該当します。一方、定型帳票は、統一された様式の書類です。
非定型帳票は情報の位置が一定でないため、従来のOCRでは正確な読み取りが困難でしたが、AI-OCRの登場により、さまざまな形式の帳票を効率的に処理できるようになりました。
AI-OCRとOCRの違い
AI-OCRは、人工知能技術を用いた高度な文字認識システムです。従来のOCRと比べ、手書き文字や複雑なレイアウトの認識精度が格段に向上しています。たとえば、くせ字や崩し字も正確に読み取ることができます。
また、AI-OCRは学習機能を持ち、使用するほど精度が向上します。さらに、文脈を理解する能力があるため、誤字脱字の自動修正も可能です。データ入力作業の大幅な効率化と人的ミスの削減が実現できるでしょう。
従来のOCRとAI-OCRの違いは下記のとおりです。
項目 | 従来のOCR | AI-OCR |
構成 | スキャン機器とソフトウェアで構成 | 機械学習やAI技術を活用したソフトウェア |
書類レイアウト対応 | レイアウト(罫線等)に厳格で、読み取る文字項目を事前に定義する必要がある | 書類レイアウトからAIが自動的に文字を認識 |
ノイズ対応 | かすれやインク漏れがある文字は認識が難しい | ノイズ処理エンジンにより、取り消し線や網掛け文字なども読み取れる |
認識精度 | 誤認識が多く、手作業で修正する必要がある | 学習機能により、使用を繰り返すことで精度が向上 |
手書き文字の認識 | 対応が難しく、認識精度が低い | 手書き文字も学習を通じて認識精度が向上 |
適応力 | 定型フォーマットの書類には強いが、非定型帳票には対応しづらい | 多様なレイアウトや非定型帳票にも対応可能 |
処理速度 | 大量の帳票を処理する際は時間がかかる | AIによる自動化で処理速度が向上 |
設定作業の手間 | 読み取り項目の事前設定が必要 | 設定なしで自動的に認識できる |
保守・更新の必要性 | ソフトウェアのバージョンアップや設定変更が必要 | AIが継続的に学習し精度を保つ |
非定型帳票AI-OCRの技術について
非定型帳票AI-OCRは、機械学習、深層学習、自然言語処理という3つの先端技術を組み合わせることで、高精度な文字認識を実現しています。それぞれの技術がどのように活用されているのか、具体的に見ていきましょう。
機械学習
非定型帳票AI-OCRの核となる技術の一つが機械学習です。
機械学習は、大量のデータからパターンを学習し、新しいデータに対して適切な判断を下す技術です。非定型帳票AI-OCRでは、数万枚を超える帳票データを学習させることで、文字認識の精度を高めています。
たとえば、請求書の処理ではさまざまな企業のフォーマットや手書きの文字を学習データとして使用します。システムは、数字の「1」一つをとっても、縦棒だけのもの、上部に斜線があるもの、下部にはねがあるものなど、多様な書き方のパターンを学習します。
また、機械学習は継続的に進化します。新しい帳票を処理するたびに、特徴を学習データに追加することで認識精度が向上するため、導入時よりも精度の高い文字認識が可能になります。
深層学習
深層学習は、人間の脳の神経回路を模した多層のニューラルネットワークを使用する技術です。非定型帳票AI-OCRでは、深層学習により、複雑な文字パターンや図形の認識を実現しています。
具体的には、一つの文字を認識する際に、線の太さや曲がり具合、傾き、かすれ具合など、さまざまな特徴を同時に分析します。たとえば、手書きの「8」という数字を認識する場合、上下の円の大きさの違いや接続部分の特徴、全体的なバランスなどを総合的に判断することが可能です。
さらに、深層学習は印鑑や社印など、文字以外の要素も高精度で認識できます。帳票上のあらゆる情報を正確にデジタル化することが可能になりました。
自然言語処理
自然言語処理は、人間の言語をコンピュータに理解させる技術です。非定型帳票AI-OCRでは、文脈を理解し、より正確な文字認識と情報抽出を実現しています。
たとえば、住所データの処理では、「東京都千代田区」という文字列を認識した場合、続く文字は丸の内や大手町といった地名である可能性が高いと予測します。
また、金額欄では、数字の前後関係から「1,000,000」という表記を「100万円」として正しく解釈します。
さらに、自然言語処理は文書の構造も理解することが可能です。請求書の場合、上部に日付や宛名、中央に明細、下部に合計金額が配置される一般的なレイアウトパターンを学習し、それぞれの情報を適切に分類できます。
非定型帳票AI-OCRのメリット
非定型帳票AI-OCRのメリットは、OCRの読み取り精度をAIによって高められることです。
読み取り範囲が拡大されることで、より多くの紙の書類を対象として「記入内容を手作業でデータとして入力する」という業務フローを代替し、業務効率化が期待できます。
AI-OCRと帳票の相性次第では、文字をデジタル化した際のエラー率が人手で作業したときよりも低くなる可能性があります。
さらに、業務ソフトやRPAなどを組み合わせることにより、AI-OCRで入力済みのデータをシステムへ送るところまで自動化できれば、さらに効率を高められるでしょう。データの仕分け・保存についても同様に、AIやRPAを組み合わせることで自動化が可能です。
多様な文書タイプを読み込める
定型帳票AI-OCRの最大の強みは、さまざまな業種の多様な帳票を高精度で読み取れることです。
たとえば、金融業界では、銀行の入出金伝票や保険の申込書を処理できます。従来は顧客が手書きで記入することが多く、OCRでは対応が困難でした。
製造業では、複雑な図面や作業指示書の文字情報を読み取り、デジタル化が可能です。受発注書や納品書など、取引先ごとに異なるフォーマットの帳票でも一括で処理できます。
医療分野では、患者の問診票や処方箋を正確に読み取り、電子カルテに反映できます。手書きの医師の署名や略語も認識できるため、医療ミスの防止にもつながります。
小売業では、手書きの棚卸表や日報、アンケート用紙などを効率的にデータにすることが可能です。
教育現場では、生徒の答案用紙や成績表の処理に活用でき、採点業務の効率化が図れるでしょう。
非定型帳票AI-OCRは業種を問わず、あらゆる文書タイプに対応可能で、企業は紙文書の電子化を進め、DXを加速させることができます。
コスト削減
非定型帳票AI-OCRの導入は、大幅なコスト削減につながります。
まず、導入によりデータ入力作業に関わる人件費の削減が可能です。AI-OCRを導入することで、作業の大部分を自動化し、人件費を半分以下に抑えられる可能性があります。
また、入力ミスによる修正作業や再入力の手間も省けるため、間接的なコスト削減にもつながるでしょう。
さらに、文書の電子化により保管スペースや文書管理の人件費を大幅に縮小できるため、紙の保管や管理にかかるコストが削減できます。
効率化と生産性の向上
非定型帳票AI-OCRは、業務プロセスの効率化と生産性向上に大きく貢献します。たとえば、従来1時間かかっていた100枚の帳票入力が、わずか5分で完了する可能性があります。
社員は単純作業から解放され、より創造的な業務に時間を割けるようになるでしょう。たとえば、営業担当者の場合、データ入力の代わりに顧客訪問の時間に注力できるようになります。
また、24時間365日稼働可能なAI-OCRは、繁忙期の業務にも柔軟に対応します。人手不足の解消や残業時間の削減にもつながるため、働き方改革の推進にも大きく影響を与えるでしょう。
データの品質向上
非定型帳票AI-OCRは、人間による入力作業よりも高い精度でデータ化をおこないます。たとえば、手書きの数字「1」と「7」の違いを99%以上の精度で識別できます。
また、入力ルールに基づいたチェック機能も備えており、郵便番号と住所の整合性確認や、必須項目の記入漏れ検出なども自動でおこないます。人為的ミスを大幅に減らし、データの信頼性向上に大きく貢献します。
非定型帳票AI-OCRの問題点は?
業務効率に大きく貢献する非定型AI-OCRですが、運用に関してはいくつか問題点があります。
帳票の多様性と複雑性
非定型帳票AI-OCRは、さまざまな形式の帳票を処理できる反面、多様性と複雑性に課題があります。
たとえば、請求書や申込書など、企業によって大きく異なるレイアウトを持つ文書の処理に苦戦することがあります。
特に、手書きの文字や印影、複雑な表組みなどが含まれる場合、認識精度が低下する可能性があります。また、新しい形式の帳票が追加されるたびに、AIの再学習が必要になることもあるため、問題に対処するにはシステムの継続的な調整と、人間による確認作業が欠かせません。
非定型帳票AI-OCRによる完全な自動化は難しく、一定の人的リソースが必要です。
リアルタイム処理の遅延
非定型帳票AI-OCRは、高度な画像処理と文字認識を行うため、処理に時間がかかることがあります。特に、大量の帳票を一度に処理する場合、リアルタイムでの対応が難しいでしょう。
たとえば、1枚の複雑な請求書の場合、処理に数十秒かかるケースもあります。数百枚、数千枚と書類の数が増えると、全体の処理時間は大幅に延びることが考えられます。
また、即時の情報が必要な業務では、従来の手入力の方が速いことがあるでしょう。リアルタイムの処理遅延を軽減するためには、高性能なサーバーの導入や、処理の優先順位付けなどの工夫が必要です。
初期導入コストが高い
非定型帳票AI-OCRシステムの導入には、高額な初期投資が必要です。たとえば、中規模企業での導入には、数百万円から数千万円のコストが必要です。
コストの内訳には、
- ソフトウェアのライセンス料
- サーバーなどのハードウェア費用
- システム構築の人件費
が含まれます。
さらに、AIの学習用データの準備や、社内での運用体制の整備にも費用がかかります。予算が限定的な中小企業には大きな負担となり、導入を躊躇する要因になるでしょう。コストに見合う効果を得るには、長期的な視点での投資計画が必要です。
導入と既存システム統合の難しさ
非定型帳票AI-OCRを既存のシステムに統合する際、技術的な課題が生じることがあります。たとえば、基幹系システムとの連携や、セキュリティ対策の実装に時間とコストがかかります。
また、社内のワークフローの変更も必要になります。従来の手作業中心の業務から、AI-OCRを活用した新しい業務フローへの移行には、社員の教育や業務プロセスの再設計が求められます。
導入における課題により、プロジェクトが長期化したり、予想外のコストが発生したりすることが考えられます。スムーズな導入には、ITベンダーと密接に連携し、段階的なアプローチを取ることが重要です。
COMITXの非定型帳票AI-OCRなら、運用に関する課題をクリアしての導入が可能です。
非定型帳票AI-OCRの成功事例
非定型帳票AI-OCRは、企業に革新的な変化をもたらしています。以下では、代表的な導入事例とその成果を紹介します。
食品卸売会社のケース
食品卸売会社のケースでは、非定型OCRを含むAIデータエントリーシステムを導入し、大きな成果を上げました。
具体的には、AI-OCRによる自動データ入力と、ビジネスプロセスマネジメントシステムの導入により、作業効率が飛躍的に向上しました。紙ベースの作業をデジタル化したことで、物流コストと保管コストも削減されました。
さらに、業務の可視化と標準化により、従来の属人的な作業を改善。多拠点での業務展開やテレワークの実施が可能になり、働き方改革にも貢献しています。また、セキュリティリスクの低減や、BCP対応の強化にもつながりました。
年間10万件以上の多様な商品伝票を処理する経理業務で、28%のコスト削減を実現しています。
総合人材サービス会社のケース
総合人材サービス会社のケースでは、AIデータエントリーシステムを導入し、顕著な成果を上げています。
具体的には、複数のAI-OCRエンジンを組み合わせ、各案件に最適なエンジンを自動で適用するシステムを導入しました。処理速度、精度、コストのバランスが最適化されました。
専門家による業務分析と、チェックロジックやマスタ補正などのサポート機能の実装により、生産性と品質が大幅に向上しました。
さらに、導入後も継続的な分析と調整を行うことで、持続的な改善を実現。結果として、受託業務別で20%から50%のコスト削減を達成しました。
結果、年間21万件の伝票や申込書などのデータ化業務で、最大50%のコスト削減を実現しました。
まとめ
非定型帳票AI-OCRの導入では、文字認識技術だけでなく、業務プロセスの最適化、データの一元管理、進捗の可視化など、総合的なアプローチが重要です。
最新の非定型帳票AI-OCRシステムは、多様な帳票を正確に読み取ることが可能です。また、従量課金制の導入や無償POCの提供など、企業のニーズに合わせた柔軟なサービスも登場しています。
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